新井由己の仕事帖

2003年12月04日 (木)

神々の山嶺 

 夢枕獏がまだ無名だったころ、僕は高校生だった。集英社コバルト文庫の『キラキラ星のジッタ』に収録されている「そして夢雪蝶は光のなか」を読んで、初めて文章で涙を流した。それ以来、唯一僕が読む小説家である。
 とにかく様々なタイプの作品を生み出している中で、本書はひさしぶりの傑作である。89年8月に上梓され、第10回日本SF大賞を受賞した『上弦の月を喰べる獅子』(早川書房)も非常に興奮させられたが、今回も同じスケールで迫ってくる。
 舞台となるのはエヴェレストである。山の話が書きたかったという著者は、ヒマラヤ登山史上最大のミステリーといわれているマロリーの失踪と遭難事件に注目する。エドモンド・ヒラリーが最初の登頂を果たす前の遠征で、マロリーによって登頂されていた可能性があるのだ。
 遺体とともにあるはずのカメラが見つかれば、登山の歴史を塗りかえることになる。エヴェレストの8000m以上の場所にあるはずのカメラが、カトマンドゥの街で売られていたらどうなるか? 日本人の山岳カメラマンがこのカメラと出会ったことから、大きな物語が始まる。
 構想から20年。書き始めてから3年以上を費やし、原稿用紙1700枚の壮大な物語が生まれた。張り詰めた空気感が伝わってくる登攀シーンは、登山に関心のない人にもぜひ読んでもらいたい。

著 者/夢枕獏
発行所/集英社
発行日/1997年8月
定 価/各1800円+税
四六判・461頁・上製
ISBN4-08-774295-4(上巻)
四六判・504頁・上製
ISBN4-08-774296-2(下巻)

オンライン書店bk1で
購入することができます。
1500円以上で送料無料!
手数料なしのコンビニ払いも選べます。
上巻を注文
下巻を注文
↑Top: 投稿者 あらい/遊民 | ブックレビュー
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?






     Copyright 2006-2012 ARAI, Yoshimi All rights reserved.