新井由己の仕事帖

2004年01月28日 (水)

ドキュメント 日本の米づくり 

 ひさしぶりに骨太のルポに出会った。鎌田慧の『自動車絶望工場−ある季節工の手記』(講談社文庫)を読んだときのように、ぐいぐいと引き込まれてしまった。鎌田は季節工としてある自動車メーカーの工場で働き、その過酷な労働環境を克明に描いたが、著者がこの本で取り組んだのは、タイトルそのままの「日本の米づくり」である。
「我々は、自分たちの食べている米のことを知らなさすぎるのではないか。米をつくっている百姓の生活も、都市生活者にはほとんどなじみがない。ましてや米の栽培方法などにいたっては、皆目わからない。露ほどの知識すらない」(まえがきより)
 著者は「米のすべてを把握したい」と思い、福島県の農村で米づくりをしている親戚の元に通って、1年を通じて作業を始めたのである。自ら体験し、そこで気づいたことを丁寧に伝えていく。東京と福島を往復する間に、田んぼで気になったことがあれば、研究者の元を訪ね、種もみは富山産がいいと聞けばさっそく出向き、コシヒカリなどの品種に偏りがあると気づいて日本の米の歴史を徹底的に追跡する。
 この本で描かれている米づくりは、農薬や除草剤を使った“慣行農法”(化学農業)である。有機栽培や無農薬が知られているが、現在でも日本の主流の米づくりなのは間違いない。
 田植えで始まって稲刈りで終わると思っていた著者は、米づくりの初日に玉砂利を敷きつめる「道づくり」を行なった。そうやって、八十八の手間がかかるといわれた米づくりのひとつひとつを体験していくのだ。
 松之山で4年間、無農薬の米を作ってきた僕が読んでも、とにかくおもしろい。こういう本を読むと、有機農家のルポを書きたくなってくる。

※この作品は1987年5月23日、情報センター出版局より刊行された。

著 者/村野雅義
発行所/筑摩書房・ちくま文庫
発行日/1992年9月24日
定 価/690円+税
文庫判・289頁・並製
ISBN-4-480-02651-7

現在、出版社で品切れ状態のようです。古本を探してください。

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