昨年春に発売された『年収300万円時代を生き抜く経済学』(森永卓郎/光文社)という本がベストセラーになっているらしい。そのせいか、雑誌でも「年収300万円」をテーマにした記事が目立つようになってきた。
僕の目標は「年収100万円で豊かな暮らし」で、できるだけ現金収入を減らしていこうと思っているところだ。そんなわけで、300万円もあったら豪遊できると思ってしまう。
さて、この本の腰帯にも「『年収300万円社会』を乗り越えて」と書いてあるが、おそらく出版社がブームに便乗して付けたのだろう。著者はもっと前から「半農半X(エックス)」という、農的生活をベースにした新しいライフスタイルを提唱していた。
「自ら米や野菜などのおもだった農作物を育て、安全な食材を手に入れる一方で、個性を活かした自営的な仕事にも携わり、一定の生活費を得るバランスのとれた生き方」
著者は「半農半X」をそう定義している。その元になったのは、屋久島在住の星川淳(作家・翻訳家)の言葉だった。星川は自著のなかで「半農半著」という自分のスタイルに触れている。おもしろいのは、厳密に5対5の比率ではなく、4対4ぐらいにしておいて、残りの2はゆとりとして考えている点だ。
生まれ育った綾部を離れて都会に暮らし、環境問題を考えて自分の暮らしを見つめ直していた著者は、「21世紀の生き方はこれだ」と直感したという。
「星川さんには執筆、翻訳という才がある。自分には何があるだろうかと問いかけた。しかし、自分には何もない。大半の人もそう感じるだろう。もしかしたら、誰もが自分の『X』を探しているのかもしれない」
そして「半農半著」の「著」の部分に「X」を当てはめて、新しい概念を生み出した。僕自身はかなり前から「半遊半労」というキーワードを持っていたが、「半農半X」には大きな可能性を感じた。
それにしても、「半遊半労」という言葉をあらためて考えてみると、ワークシェアリングにも当てはまる。お金を稼ぐことを第一にしないで、好きなことで暮らしていく気持ちは、「半農半X」にも共通している考え方だ。
「現代に欠けているのは、与え、分かち合う文化」と著者は言う。すべてを自分のものにするのではなく、今あるものを活かし合い、ともに暮らす人たちと助け合う。日本の田舎には、まだそういった感覚が根強く残っている。自分の「X」を手にして田舎に移り住む人は、着実に増えている。
●目次
はじめに 今、なぜ「半農半X」なのだろう
第1章 田舎に出よう!
そこは人問復興の場だった!
人と人の間で心地よく生きる−−「半農半X」の神髄
大好きなことをして食べていける社会は、可能か
「小さな暮らし」と「充実感ある便命」−−これが「半農半X」だ
「半農半へルパー」、理想的な姿
「人生最高の朝ごはん」を主宰する青年
「X」を求め磨く人々−−それぞれの田舎暮らし
移住者の北上現象
「自分の存在に自信が持てた」−−映画字幕翻訳者の場合
「X」探し−−大企業を辞め、就学前の二児を連れて
「日本のバルビゾン」を目指す画家夫婦
「X」の文字は、「自分」と「社会」の調和を示す
初めての囲舎暮らし、どう始めるか
何度も足を運ぶ、友だちをつくる
「所有価値」から「利用価値」へ−−家、田畑の賃貸は廉価
第2章 小さな暮らし、大きな夢−−田舎暮らしの楽しみ
物欲縮小、健康獲得、甦る家族「半農」の意味
好きなことをしていくのに、「半農」が不可欠な理由
「食べていく」ということの意味は?
稲の都合に合わせるか、人間の都合に合わせるか
「引き算の暮らし」−−「半農」生活の原則
「生活収入」少なくも、「心の収人」大きい
必要なものさえ、満たされればいい−−買い物の判断基準
「引き算の暮らし」には、大きな「プラス」がある
「家族の団欒」の場のつくり方
「家族って、ベースキャンブみたいだね」
集中と選択−−お金の使い方
大切にしたい「生命」を起点にした食生活
「おいしいもの」追求ではなく、「おいしく」いただく
「七輪料理を極める」−−つれあいのテーマ
味噌づくりは、わが家の大切な行事
米づくりは、家族、地域の人々との「共同体」としての仕事
農家総出で、米づくり開始
人力による田仕事が「家族協働」の喜びを教える
田んぼには、生命の多様性の発見がある
さまざまな生命が宿るわが家の田んぼに、娘が興味を示す
植物の生き残り戦略に驚喚
田んぼは、鳥や虫のレストラン
「農」は人間教育の場だ!
新米の誕生にワクワク
食糧、エネルギーの自力調達を学ぶ幼椎園児
家族が持つ機能とは何か?
第3章 きっと見つかる! 自分という魅力に満ちた原石
「好きなこと」と「役に立つこと」の調和−−「半X」が目指すもの
「ないものねだり」から、「あるもの探し」へ
七○歳にして「農家民泊」を始める−−「福業」その一
「八○歳になって、初めて人に教える先生になった」−−「福業」その二
「よい地域」の条件とは?
地域マップづくりで、地域を見つめ直す
「里山的生清」−−オンリーワンのまちづくり
お年寄りへの勇気づけ−−五○円でできること
都会からの移住者の積極的受け入れ
綾部に「一万の物語」を誕生させたい
「一粒のタネ」から人間を考える
種苗会社の掌の上で「農」をしていることに愕然
「いのち」の支援者として、在来種を伝えたい
ゴマづくり五〇年−−ひとつまみから始めて
「タネ」という言葉が持つ深い意味とは?
現代に欠けているのは、与え、分かち合う文化
感動した言葉をあなたに−−私の「X」
さまざまな「とらわれ」を手放す訓練のとき
人と人をつなぐ地域通賃
第4章 それは「やりたいこと」か「やるべきこと」か
自分主役の人生創造
沖縄移住現象は、何を物語っているか
幸福のものさしの目盛りが、「円」から「時間」へ
人間を大切にする国家理念を掲げた小国
七世代先の子孫に責任を持つ、北米先住民の哲学
バリ島社会に理想のライフスタイルを見る
万物との関係性の回復が、「半農半X」の真価だ
なぜ、「農」と「X」の二つが必要なのか
「生命多様性」の時代にすべきこと
都市生活、会社生活ではできないこと
残せるのはお金か、事業か、思想か、生涯か
他者への思いやりが環境問題の原点
自分の子どもに何を残せるか?
「何をするか」から「何をしたか」へ」−−「自分探し」の旅
なぜ、夫の定年後、夫婦間にカルチャーギャップが生じるのか
「やりたいこと」は、どう見つけるか
身辺の「生きている事実」に目を向けよ
お気に入りの彼女の畑を見に行く−−感性の偉大さ
「X」は自分が変わるきっかけになる
私の「半農半X」のゴールは?
あなたの看板商品は何?
第5章 「半農半X」は問題解決型の生き方だ!
さまざまな社会病理を乗り越える知恵
「半農半X」人の自作自演の生き方から、何が見えるか
「感じることを大切にしたい」
「四十代になり、人生を逆算して考えるようになった」
ゆったりとした時間を持つ−−心豊かに暮らす生き方
おいしく安心な米づくり、それがライフワーク
意気込みこそ最大の力−−素人からの米づくり
「志」+「農工商」−−創作家の生き方
「生活そのものが創作を導く」
オープンハートが幸せを引き寄せる
どう生きる、定年者のセカンドライフ
生き方を初めて試されるのが、セカンドライフだ
伝統、文化、生活の知恵の伝達−−定年者はどう「X」を表現するか
「あんなふうに歳をとりたい」と思われるのも「X」だ
「コミュニティビジネス」と「農的なもの」の融合
「半農半ヘルパー」は、高齢社会での生き方モデル
子どもの教育に農業体験を
おこさない「村おこし」「まちおこし」
NPOの数だけ、社会に謀題がある−−ビジネスの芽
新しい幸せづくりの知恵、それが「半農半X」という生き方
半農の適正規模、その目安は?
フリーターに、田舎に目を向けてもらいたい!
「夢の自給率」を「半X」で上げよう!
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