新井由己の仕事帖

2004年03月02日 (火)

半農半Xという生き方 

 昨年春に発売された『年収300万円時代を生き抜く経済学』(森永卓郎/光文社)という本がベストセラーになっているらしい。そのせいか、雑誌でも「年収300万円」をテーマにした記事が目立つようになってきた。
 僕の目標は「年収100万円で豊かな暮らし」で、できるだけ現金収入を減らしていこうと思っているところだ。そんなわけで、300万円もあったら豪遊できると思ってしまう。
 さて、この本の腰帯にも「『年収300万円社会』を乗り越えて」と書いてあるが、おそらく出版社がブームに便乗して付けたのだろう。著者はもっと前から「半農半X(エックス)」という、農的生活をベースにした新しいライフスタイルを提唱していた。
「自ら米や野菜などのおもだった農作物を育て、安全な食材を手に入れる一方で、個性を活かした自営的な仕事にも携わり、一定の生活費を得るバランスのとれた生き方」
 著者は「半農半X」をそう定義している。その元になったのは、屋久島在住の星川淳(作家・翻訳家)の言葉だった。星川は自著のなかで「半農半著」という自分のスタイルに触れている。おもしろいのは、厳密に5対5の比率ではなく、4対4ぐらいにしておいて、残りの2はゆとりとして考えている点だ。
 生まれ育った綾部を離れて都会に暮らし、環境問題を考えて自分の暮らしを見つめ直していた著者は、「21世紀の生き方はこれだ」と直感したという。
「星川さんには執筆、翻訳という才がある。自分には何があるだろうかと問いかけた。しかし、自分には何もない。大半の人もそう感じるだろう。もしかしたら、誰もが自分の『X』を探しているのかもしれない」
 そして「半農半著」の「著」の部分に「X」を当てはめて、新しい概念を生み出した。僕自身はかなり前から「半遊半労」というキーワードを持っていたが、「半農半X」には大きな可能性を感じた。
 それにしても、「半遊半労」という言葉をあらためて考えてみると、ワークシェアリングにも当てはまる。お金を稼ぐことを第一にしないで、好きなことで暮らしていく気持ちは、「半農半X」にも共通している考え方だ。
 「現代に欠けているのは、与え、分かち合う文化」と著者は言う。すべてを自分のものにするのではなく、今あるものを活かし合い、ともに暮らす人たちと助け合う。日本の田舎には、まだそういった感覚が根強く残っている。自分の「X」を手にして田舎に移り住む人は、着実に増えている。

著 者/塩見直紀
発行所/ソニー・マガジンズ
発行日/2003年7月19日
定 価/1500円+税
四六判 ・230頁・上製
ISBN4-7897-2065-9

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