新井由己の仕事帖

2004年03月17日 (水)

メディア アクセス ガイド (MAG)2号

 あなたがどこかで働こうとしたときに、最初に聞くのは何だろうか? 仕事の内容はもちろん、労働時間や時給も気になるところだ。それらを考えたうえで、そこで働くかどうかを決めるはずである。
 ところが、マスコミで仕事をする場合、自分の“給料”がいくらか聞かないのが慣例であり、聞いても教えてくれないケースが多い。フリーランスのなかには、「原稿料を聞くと仕事が来なくなるのでは」と心配する人もいるほどだ。
 2001年1月、ライターやフォトグラファーのための売り込み・持ち込み情報源である『メディア アクセス ガイド(MAG)』(現代人文社)が創刊された。それを手にした僕は、これまでの胸のつかえがとれた気がした。
 実は『MAG』が登場する前に、ライターたちが集まるメーリングリストにギャラや経費の情報交換をしようと呼びかけたことがある。僕が書き並べたリストに興味を持ってくれた人は多かったが、ほかのメンバーからの情報提供はまったくなかったのだ。
 フリーランスに必要な情報をシェアすれば、持ち込みや売り込みの基準を得ることができるし、必然的に条件のいい媒体に有能なフリーランスは流れていく。その結果、雑誌のレベルも上がり、相乗効果で業界全体のレベルも上がっていくだろう。
 ところが、10年以上もこの業界で仕事をしているのに、原稿料はまったく上がらない。「少し上げて欲しい」と言おうものなら、駆け出しの(安く使える)若手ライターに仕事が回っていく。けっきょく、フリーランスとして生き残るためには、自分にしか書けないものを手にするしかなかった。
 本書が手本にしたのは、アメリカで発売されている『Writer's Market』である。2003年版で創刊82周年を迎えたというから、その歴史の古さに驚かされる。前半には企画書の書き方や仕事へ向かう心がけなどが紹介され、後半には編集部や出版社の所在地や掲載記事の傾向、契約内容や具体的なギャランティーが8000件以上も掲載されている。
 『MAG』1号は133件、『MAG』2号は234件と、まだまだ“本家”の数には及ばない。これはおそらく、今まで表に出なかった情報に対する反感もあるのだろう。創刊号が出たあとに、出版社や編集部から苦情が寄せられたという話も聞く。
「情報をオープンにしシェアすることで、フリーランスが安心して仕事ができる基盤をつくり、そして市場への新規参入を促す。これは実力本意の自由な競争につながるが、結果的に媒体の質をあげることになるだろう。そうして業界全体の活性と向上をはかることが目的だ」
 記載されている内容は、それぞれの立場によって異なるはずで、普遍的なものではない。初版1万部と書いてある出版社に持ち込んだら、初版3000部と言われるかもしれない。情報の質を高めるには、元になる分母の数が増えなければいけない。
 これは“ビンボー旅行”のバイブルとして存在しているガイドブック「地球の歩き方」シリーズにも似ている。「親切なおばさん」がいつも親切とは限らないし、「清潔で安いホテル」は人によって汚いと感じるかもしれない。だからといって「間違っている」と声高に怒るのは無意味だ。書かれている情報をひとつの判断材料にして、自分で選択しながら旅を進めていくことが大事なのだ。
 出版社や雑誌編集部は、どういう企画や原稿を求めているのか公開し、それに対するギャランティーも明らかにすべきだ。フリーランス側も、それぞれの経験をシェアし、自らのスキルを高めて売り込む努力をしなければならない。
 定期的に(理想は毎年のようだが)刊行される『MAG』の次号では、企画書の書き方や具体的な売り込み方法なども紹介してもらいたい。この本がますます充実し、メディアにアクセスするときの「定本」になることを期待したい。

著 者/メディアアクセスガイド(MAG)編集委員会編
発行所/現代人文社
発行日/2004年2月28日
定 価/2000円+税
A5判 ・303頁・並製
ISBN4-87798-203-5

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