新井由己の仕事帖

2005年10月26日 (水)

もの忘れを防ぐ 記憶力を伸ばす 

 30代後半からもの忘れが激しくなった気がする。というより、それ以前に「もの覚えが悪くなった」のかもしれない。夜になって、今日一日の出来事を覚えていなかったり、昼に何を食べたか思いだすのに時間がかかったりする。「もう年だな」と思ったり、「ボケが始まったのか」と、寂しい気持ちになるのは、僕だけではないだろう。
 脳の仕組みを勉強したり、記憶のメカニズムを覚えようとしても、自分には理解できないかもしれない。そんなことを思いながら本書を読み進めていたら、18ページ目に「記憶」と「感情」は深い関係があるという話が現れた。この部分を読んで、僕は「なるほど」と膝を打ったのである。何かに感動した経験はなかなか忘れないし、おいしいものを食べればその店を人に勧めたくなる。この本は信用できる、と思った。
 脳細胞は2〜3歳のころがピークで、その後はどんどん減少していく。単純計算で1日10万個近い神経細胞が死んでいるそうだ。そんな話を聞くと、自分の脳細胞がどんどん減少し、その影響で「もの忘れ」が激しくなったのではないか、もしかしたらアルツハイマー病への第一歩なのでは、と思ってしまうのもしかたない。
 ところが、本書によると、毎日10万個の神経細胞が消滅しても、仮に100歳まで生きたとして、失われる数は「たった3.6パーセント」らしい。脳細胞の半分くらいが死んでしまうイメージは、大きな勘違いだったのである。また、記憶力の衰えは、神経細胞が減っていくことと無関係だという。
 脳の研究で知られる監修者の池谷裕二氏は次のように訴える。
「日常生活でど忘れしてしまうことは、全体の記憶の容量を考えれば、わずかな量にすぎない。仮にみなさんが一日で数十回ものど忘れを経験したとしても、それは全体から見ればたいした問題ではない。……それなのに、どうして人は些細なことにこだわり、落胆してばかりいて、自分の脳が本当はいかにすばらしい性能を発揮し続けているかという真実に目を向けないのだろうか」
 人間の脳は忘れるようにできていて、覚えようという意識がなければ覚えられないようだ。目に見えるもの、耳に聞こえるもの、体に触れるもの、それらをすべて記憶していたら、たちまち脳はパンクしてしまう。だから、必要なもの意外は忘れる(覚えない)ようになっているのである。
「もの忘れが増えてもそれに悩んだり、不安になったりする必要はありません。人間は忘れる動物なんだと気楽に受け止めてください。忘れたら思い出せばいいのだし、何度も思い出しているうちにしっかりと記憶されます」
 著者の言葉は非常に簡潔でわかりやすい。第1章「なぜ、ものを忘れるのか?」、第2章「ヒトがものを記憶する仕組み」、第3章「これで万全! もの忘れを防ぐ日常習慣」、第4章「試してみよう! 記憶力をアップさせる方法」と読み進めると、忘れることに対する不安が消え、新たに何かを覚えたくなってくる。

著 者/夏谷隆治
監修者/池谷裕二
発行所/三修社
初 版/2005年9月10日
定 価/1500円+税
四六判・240頁・並製
ISBN4-384-03676-0

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