2009年01月17日 (土)
ウィ・ラ・モラ オオカミ犬ウルフィーとの旅路

■オオカミ犬ウルフィーが伝えてくれたもの
大学の探検部員として北極圏を流れるマッケンジー川を下った著者は、長い間、くすぶり続けていたカナダへの想いを絶ちきれず、卒業から数年後、先住民のフィッシュキャンプで1年間を過ごした。その後、それまで通っていた北極圏ではなく、カナダ西海岸に広がるレインフォレストに興味を持った。
レインフォレストを歩きたいというだけで「特別な旅の目的はなかった」から、出会った人から聞いた島や人を訪ねていく。オオカミが暮らすという森でキャンプをするときに、心配した人が「ウチの子犬をお供に連れていきなさい」と言ってくれた。生後3か月のオオカミ犬が、この旅のパートナーとなるウルフィーだった。
ところが、「さあいっしょに旅に行きましょう」と言われても、犬にとってみれば迷惑な話だ。家から10メートルも行かないうちに引き返してしまう。最初は腕に抱かれていたウルフィーも、森に入って自由になり、しだいに著者に心を許していく。
旅を続けているうちに、彼女とウルフィーの距離がしだいに近くなり、信頼関係が結ばれていく。そしてウルフィーがいることで、いろんな人たちから声をかけられ、また新しい出会いにつながる。
本のタイトルの「ウィ・ラ・モラ」は、ネイティブの言葉で「誰もがみなともに旅を続ける仲間」という意味らしい。ウルフィーと旅をともにしながら、著者は考える。
「人は目に見えない壁を作って、生きている。それは他者から自己を守るための防御壁であったり、個人のレベルを超えて、国や宗教を背景に長い歴史の中で積み上げられ、受けつがれてきた障壁であったりする。でも、もしかしたら、人は築き上げてきた壁を内側から取り払い、他者と深く共鳴しながら、人生という旅を続けていくことができるのではないか」
旅の途中、日本にいる祖母が亡くなり、帰国するかどうか葛藤することがあった。旅の目的がはっきりしないのに、ここに留まる意味があるのか−−。けれども彼女は、あることに気づいて、旅を続けることを決意した。
「この旅から、ひとつ確信していることがあるんです。それはすべてに偶然はないってこと。だから、あなたと私が出会ったことも必然なんですね、きっと」
自分が経験したことを等身大の言葉で表現する著者は、旅から戻ったあと、生体エネルギーやヒーリングを学ぶためヨーロッパにある4年制のヒーリング・スクールに通っているという。スピリチュアルブームに嫌悪感がある人にも、彼女の言葉なら何かが伝わるかもしれないと思えるほど、文章も写真も魅力的だ。
また「すべてに偶然はない」とするなら、この本を手にしたことにも何か意味があるのだろう。そして、レビューを読んでいるあなたにも、きっと……。
著 者/田中千恵
発行所/偕成社
初 版/2009年2月
定 価/1800円+税
A5判・260頁・並製
ISBN978-4030033702
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